写真展SAPOREオンライン

写真展SAPORE「サポーレ」によせて

1998年にイタリアに渡って以来、数多くの料理人やイタリア料理に触れてきました。地元フィレンツェはもちろん時には真夏のシチリア島やサルデーニャ島、あるいは雪降るヴェネツィアやミラノで、どこへいってもその都度感じたのはイタリア料理が持つ奥深さです。イタリアという国は古代ローマ帝国崩壊以降暗黒の中世、ルネサンスを経て小国に分裂した時代が1000年以上続き、国家として統一されたのは明治維新にわずかに先立つ1861年のことです。そうした複雑な歴史と地理的要因によって育まれて来たイタリア料理は地方ごとの特色が豊かなのがなによりの特徴。山一つ超えれば料理も、あるいは言語も異なるといわれる多様性=Diversità(ディヴェルシタ)こそがイタリア料理の存在意義、アイデンティティなのだと思います。

今回の写真展SAPORE「サポーレ」ではイタリア料理や食に携わる20人の肖像と彼らが作る料理を展示します。SAPOREとは「味」を意味するイタリア語ですが、それは味覚としての「味」のみならずLui è uomo di sapore「彼は味のある男だ」というような言い方もします。イタリア料理に半生を捧げた彼らが作る料理からその背後に広がるイタリアの多様な風土と歴史、ひいてはイタリアという国が持つ独特のSAPOREを感じていただければ、と願ってやみません。

また、この写真展はイタリア料理で愛媛を盛り上げようとする活動「プロジェクトえひめ」の一環として、多くの愛媛の方々の協力によって実現しました。イタリア料理を作り続ける料理人諸兄姉、イタリア野菜や柑橘類を栽培する生産者の方々。ここ数年縁あって愛媛を足しげく訪れるようになり、そうした方々と知り合う機会に恵まれましたが、それはまさにイタリアが結びつけてくれた不思議な縁としかいいようがありません。「プロジェクトえひめ」にかかわる全ての方々に感謝を。特に写真展実現に向けて奔走してくださったロカンダ・デル・クオーレの青江博さんにはひときわ大きな感謝を申し上げたく思います。彼なくしてこの写真展は実現しませんでした。

池田匡克(いけだまさかつ) 2016年1月萬翠荘にて